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小布施日和

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チャプレンからのメッセージ

わたしの願いではなく、御心のままに
ルカによる福音書 22:42

     

 皆様は、「ぜつぼうの濁点」という絵本をご存知でしょうか。
町の道端に濁点が置き去りにされていました。それは、主人の「ぜつぼう」についていた濁点でした。 いつも接している主人の絶望の深さが自分のせいではないかと思って、 主人の「ぜつぼう」に頼んで捨ててもらったのです。 「ぜつぼう」に付いていたという理由で、濁点は誰からも嫌われました。

「おせっかい」がやってきて、濁点を沼に放り込みます。濁点は、「おせっかい」がするがままにまかせます。 沼の中に沈みながら、主人だった「ぜつぼう」の気持ちが理解できたような気がしました。 こうして沈んでいく孤独というむなしさから、主人を救い出すことができたのだ。 だから、それを喜びとしようと濁点は思いました。

これでいいのだ。このままでいいのだ。これでよかったのだ......というつぶやきが 「きほう」の三文字に変わります。そして、「きほう」は、濁点にくっつけと言います。 水面に浮かんだ時、「きぼう」という言葉が生まれ、ぱちんとはじけて、 あまねくこの世を満たしたというお話です。濁点の従順で謙虚な思いが絶望から希望を生み出します。

2013年6月1日に、私は、司祭按手を受け、同時に、新生礼拝堂の牧師と 飯山復活教会の管理牧師に任命されました。新生礼拝堂の歴史を見ると、それは絶望のなかで、 謙虚に神様の御心にしたがって希望を生む歴史でもあります。療養所が開設された昭和初期、 日本は、大恐慌の中、町には失業者があふれていました。 そうした悲惨な社会の状況は結核を生む温床となりました。患者たちは職場や家に放置され、病菌は蔓延し、 結核は死に至る病、亡国病として恐れられ、多くの若者の命を奪いました。 日本聖公会中部教区の伝道者・カナダの宣教団は、数では小さなミッションでしたが、 結核に対して深く心を痛めます。会議録を読むと、結核に対する施策は、 国が行う大規模な仕事であって、私たちのような小さな集団になにができるのかという 意見もあったとされています。それでも、最後に「百分の一の仕事でも、 我々のなすべき義務である」として、療養所の建設を母教会に訴え、 募金活動がカナダにおいて開始されていきました。

結核という絶望のなかにあって、神様の御心への謙虚さ従順さが、新生病院・新生礼拝堂 という希望を築き上げたことを覚えたいと思います。そして、そのような新生礼拝堂の牧師、 飯山復活教会の管理牧師に任命されたことを誇りに、司祭として牧師として 「わたしの願いではなく、御心のままに」神と人に仕えていきたいと思います。 これからもよろしくお願いいたします。

<新生礼拝堂牧師 司祭 ヨセフ石田雅嗣>